旅する絵本作家として知られるプラハ出身のミロスラフ・サセック(Miroslav Sasek)によるロンドンの街を紹介した絵本「This is London」は、人気の「ジス・イズ(This is)」シリーズの中の1冊です。
1959年に出版された「This is London (This is . . .)」を皮切りに、全18冊が出版された「This is」シリーズですが、このロンドン編はシリーズ中の第2作目にあたります。
出版年と同じ1959年には、ニューヨーク・タイムズ選定最優秀絵本賞も受賞しています。
さて、この「This is London」なんですが、もう何ていうか、素晴らしい!のひとことです。
サセックの絵が素敵
表紙は、べたっとした感じの塗りで描かれた衛兵さん……なのですが、作品中の絵は色の濃淡がきれいな、おそらくは水彩で描かれた人々や建物でいっぱいです。
線画と水彩をミックスしたかのようなこのタッチ、個人的好みのど真ん中です(笑)
今どきの、こじゃれた雑貨紹介やライフスタイル系書籍の挿絵なんかに使われていそうなテイストで、この絵を眺めているだけでも、心がふわっと軽くなるのを感じます。
絵本の構成が素敵
本を開いて1ページ目。いきなり目に飛び込んで来るのは、褐色で塗りつぶされたページ。
「Well, this is London.」
な、なに?
と思ってページをめくると、
「like this!」
の言葉とともに眼下に広がるロンドンの風景。
最初の塗りつぶされたページは、霧におおわれたロンドンを、そして次のページでは霧のない見通しの良いロンドンを表現していたというわけです。
ほほぅ、そう来たか……ってな感じで、すでにこの段階で心は本の中に持っていかれているわけですが、ページをめくるたびにロンドンの名所が紹介されていたり、人々の毎日の生活が描かれていたりで、好奇心のおさまる暇がありません。
何よりもノスタルジックな感じが素敵
1959年に出版された本ですから、やや時代遅れになってしまった部分があるのは事実です。
巻末にはロンドンの今が注釈のような形で付け加えられていて、たとえば、イラストの紅茶店は今はもうないよ、ロンドン警視庁は移転してるよ、みたいなことが書いてあります。
半世紀以上の時がたっているのですから、違いがあるのは当然のことです。
だったら、この絵本が古くさいものになってしまっているかと言うと、そんなことは全然なくって、その古さがいい具合に昇華して、ノスタルジックな味わいを生み出しているのです。
作者のサセックさんは、もちろんそんなことまで想像してこの本を描いたわけではないのでしょうが、結果として今なお愛される名作の仲間入りを果たしているというわけです。
かように、素敵な絵本であるわけですが、肝心の英文がちょっと難しく感じました。
絵本だし、短い文章だし、とお気楽に考えていると、なんだか意味が上手くとれない部分がちらほらとあるのです。知っている単語が並んでいるだけなのに、意味がわからないという……、まあ、良くあることって言えばそうなんですが、ちょっともやっとした気分が残りました。
もっともこれは、完全に私の英語力の問題であるわけなんですが、ひょっとしたらどなたかの参考になるかと思いまして、がんばって恥をさらしてみました(笑)。